むさしさかいの旅行記

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只見線只見駅の棒線化と臨時列車の設定【3/30追記】

 

 2023年12月1日、只見線只見駅の一部設備が使用停止となり、事実上の棒線化が行われたことが話題となりました。

 本記事では同日の他駅の営業体制変更や、臨時列車の設定時刻等の変化をまとめつつ、今後の只見線の運行体系について考察します。

3/30 追記しました

第八只見川橋梁 (会津塩沢会津蒲生間)

 

背景情報

 只見線は小出~会津若松(135.2km)を結ぶローカル線で、沿線人口が希薄な一方で美しい四季の車窓を眺められることから人気があります。

 2011年7月の新潟・福島豪雨で、会津川口~只見が長期不通となりました。復旧費用の多くを自治体が負担し、かつ福島県が同区間の施設を保有し、JR東日本を運行会社とする上下分離方式を採用。2022年10月1日に運転再開しました。

只見線の交換設備

 只見線は輸送密度を反映して交換設備が乏しく、昨年の運転再開時点で、西若松会津坂下会津宮下会津川口・只見・大白川の6駅が1面2線あるいは2面2線の交換可能駅です。

安全側線・留置線を大幅に省略した配線図。只見駅下り本線は赤色の線路。

会津宮下駅 (23年10月)

 

定期列車のダイヤ

 只見線の定期列車は

西若松会津坂下 : 7往復

会津坂下会津川口 : 6往復

会津川口~大白川 : 3往復

*大白川~小出 : 5往復(うち1往復は平日のみ) + 回送1往復

 途中駅のうち、会津坂下では1日4回・会津宮下では1日2回・会津川口では1日3回・大白川では(回送を含めて)1日3回の列車交換が設定されています。また、会津川口では2線の両方で夜間滞泊を実施しています。

大白川駅での列車交換 (22年11月)

 只見駅では、豪雨被害を受ける2011年以前から、定期列車の交換が設定されていませんでした。

 

営業体制

 途中駅の営業体制は、全線再開以降

西若松 : 業務委託(会津鉄道)、出札窓口あり

会津坂下 : 直営、みどりの窓口(8:30-12:00)(13:00-17:30)

会津宮下 : 直営、出札窓口

会津川口 : 直営、出札窓口

*只見 : 直営、出札窓口

*その他 : 無人

乗降人員が2桁の駅でも直営の有人駅となっており、POS端末を用いた乗車券・指定席券の発売を受けていました。

会津川口駅の出札窓口(21年5月)

 

23/12/01の変化

只見駅(23年10月) 左側が上り本線、右側が下り本線。手前に側線・転車台を有する。

 

 今年12月1日、只見駅の下り本線(小出方面)の信号機が横向きとなっている写真SNSに投稿されました。

只見駅の変化

 SNSに投稿された写真から読み取れる変化は、

*下り本線(小出方面)、駅舎に近い側の線路の信号機を使用停止

*下り本線の一部を枕木で閉鎖

*上り本線とその信号機は引き続き稼働

です。これだけでは冬期の積雪対策と区別がつきませんが、2023年7月の只見町議会だより(pdf)により、設備の削減が行われたことが判明しています。

*下り本線上下出発場内信号機撤去

*分岐器撤去・常時鎖錠分岐器化

これは、分岐する線路は残されるものの、通常の方法で下り本線を使用できなくなる、事実上の棒線化を意味します(議会においても列車交換ができなくなる点指摘あり)。

 また、出札窓口の営業時間が12:00-14:40に短縮となっています。

交換駅の無人

 さらに同日、会津宮下駅会津川口駅の営業体制が変更となりました。

会津宮下 : 無人

会津川口 : 無人駅(月数回社員を派遣し、出札窓口を営業) 簡易委託(7:50-15:40, 指定席取り扱いなし)

 

推察(CTC化にあわせた設備費削減?)

 上記から推察できる変化が「只見線全線のCTC化」と「交換駅での運転扱いの廃止」です。CTC(列車集中制御装置)は、運転指令所が遠隔で駅の信号・分岐器を操作できるような仕組みで、JR東日本では中央本線(甲府小淵沢)や外房線(千葉~蘇我)など一部を除き、既に広く導入されています。

 只見線では、2012年9月まで、信号機の代わりに通行証を用いるタブレット閉塞を運用しており、その名残で各交換駅の信号扱い及び発車合図は、現地の係員が担当していました(列車発着時間以外では窓口業務も実施)。

只見駅にて。駅社員が発車に立ち会う(23年7月)

 CTC化は小出~只見間では2009年3月に実施され、同時期に途中交換駅の大白川が無人化されています。会津宮下会津川口が直営駅→無人駅に格下げとなったことから、12月1日又はそれより前に、残りの区間もCTC化がなされたと思われます。

 CTCの導入には、遠隔で進路制御をするのに必要な通信機器室が必要です。先の只見町議会に説明された設備改修の理由には

特殊設備を減らすことにより安全性向上、施設管理、保守に関わる維持費低減・労働環境改善。

と記されており、只見駅は、定期列車の交換がないことから、CTC化にあわせて設備費削減を目的に、交換設備が停止されたと推察します。上述の通り、只見駅は(少なくとも)昼間は社員が配置される一方、その間に発車する列車(430D)でも駅員の発車合図は省略されるようになりました。

 

臨時列車の運転

 12月から只見駅では列車交換が不可能となりました。1日3往復ある定期列車は、只見駅で交換を設定していません。

 一方、只見~大白川間に支社境があることから、長らく只見線の臨時列車は、小出側と会津若松側それぞれで設定し、両方の設定日は只見駅で相互に乗換とする態勢がとられていました。

 2023年夏の設定時刻(pdf)は、

会津若松

 風っこ只見線夏休み号(7/22.23.29.30) : 只見 12:36着・13:30発

 只見線満喫号(8/5.6.11-13.19.20.26.27) : 只見 12:17着・13:35発

*小出側

 普通列車(7/22.23.29.30.8/5.6.11-13.19.20.26.27) : 只見 12:41着・13:27発

となっており、13時前後に只見駅の交換設備を利用していたことになります。会津若松側の臨時列車が上り本線に、小出側の列車が下り本線に入線し、そのまま折り返す形でした。

只見駅に停車する「風っこ只見線夏休み号」と臨時普通列車(23年7月)

 また、2022年10月1日・2日に復旧を記念しての「再会、只見線号」は、DE10が旧型客車3両を牽引する編成で運転されており、只見駅で機回し作業が行われました。

railf.jp

 

 一方、今年秋の臨時列車の時刻には、只見駅の棒線化を見据えた変更が既に生じています。

 2023年秋の設定時刻(pdf)は、

会津若松

 風っこ只見線満喫号(10/7-9.14.15) : 只見 12:24着・13:15発

 只見線満喫号(10/21.22.27-30.11/2-6.11.12) : 只見 12:17着・12:48発

*小出側

 普通列車(10/7-9.14.15.21.22.27-30.11/2-6.11.12) : 只見 10:29着・13:27発

となっています。

 変更点としてまず、小出側の列車が2時間繰り上げられました。また、10/21以降「只見線満喫号」上りの只見駅発車が40分早まり会津川口で長時間停車が設定されました。あわせて、小出側の普通列車只見駅到着後に小出駅まで回送されていることがわかっています。

 10月前半の「風っこ」運転時は、風っこの発車後に、縦列で待機していた小出行きの普通列車を入線させ、下り本線の使用を避けていたとの情報が存在します。

 また、10/21以降は、会津若松行きの臨時列車が只見駅を出発後に、大白川駅から回送を出しても、小出行きの時間に間に合う設定となりました(所要時間は30分)。

 

 したがって、今年の秋期より、既に只見駅での交換を実施しないように臨時列車のダイヤを変更しており、10/21以降は只見駅での縦列停車も回避して運転できる(通常の単線の閉塞=前の交換駅が空いてから信号開通)ように時刻が見直されたことが読み取れます。

 なお、参考として、11月上旬には、信号機の停止に向けた準備と思われる作業が目撃されています。

 

今後の運行は

 只見駅が実質的に棒線化されたことにより、会津川口~大白川間で列車交換が不可能となりました。

 臨時列車については、「再会、只見線1周年号」(2023年10月1日)のように日中に片方向で走破する設定は引き続き可能であるほか、今年の秋臨と同様の形態で、只見側・会津若松側の両方から運転が継続されるものと予想します。

2024年春の時刻は

会津若松

 風っこ只見線満喫号(4/27-29.5/3-6) : 只見 11:57着・12:48発

 只見線満喫号(5/11.12.18.19.25.26) : 只見 12:05着・12:48発

*小出側

 普通列車(4/27-29.5/3-6.11.12.18.19.25.26) : 只見 10:29着・13:27発

と、同様となりました。

 停止された下り本線や転車台は、撤去の動きはみられませんが、2011年・2022年などに運行実績のある客車列車を再び入線させる場合、機回しのために再稼働の処置が必要です。

「再会、只見線一周年号」を歓迎する地元住民 (23年10月)

 他方、同区間は走破に1時間30分を要するため、単純計算で通し運転の列車は3時間に1本しか設定できません。定期列車の増発はかなり難しい条件になったと思われます。

 現状、只見線の通し運転は1便目が早朝に発車し、3便目は夜間の運転となり、2便目に乗客が集中しています。途中下車の難易度も高く、増便・増結による混雑の緩和や、観光需要の喚起が課題となっている中、増発の可能性を潰す只見駅の設備削減には、現地の議会やSNS上でも厳しい目が向けられている印象です。

 また、12月現在は、只見駅の上り本線の信号機は稼働しているので、同駅は棒線化されたものの閉塞の境界となっていることが伺えます。仮にこれも廃止されると、上記の方法での臨時列車の運行も不可能になります(1閉塞に2列車が進入する運転計画になる)。

 

 いずれにしても、只見駅での列車交換シーンは8月で見納めとなりました。今後、只見駅がどのようにスリム化されるかによって、臨時列車の設定の幅が変わってくることとなります。引き続き注視していきたいと思います。